ナノ化学科とは?
研究を語る



高性能な二次電池が今後のエネルギー問題、
環境問題解決に大きく貢献します
 

電子化学研究室 佐々木幸夫教授(理学博士)
電池分野での権威。日本化学会化学電池材料研究会にて幹事を務めるほか、電気化学会、米国電気化学会、国際電気化学会等に所属し、活躍中。

人類は20世紀において、石油、石炭、天然ガスといった化石燃料の利用により、豊かで便利な生活を実現しました。その反面、これら燃料の大量使用は地球の大気汚染や温暖化を引き起こしました。21世紀もこのような燃料は重要なエネルギー源であることは間違いありませんが、一方では枯渇の問題も指摘されていることから、代替となるエネルギーに関する研究が盛んに行われています。
 今、化石燃料に代わる、クリーンなエネルギー源として注目されているのが、充電のできる高性能な二次電池です。二次電池の中でも携帯電話、デジタルカメラ、ノート型パソコンなどに最も多く使われているのが、リチウムイオン二次電池です。我々はこの二次電池についての電解液の研究・開発を行っていますが、最終目標としているのは、真の電気自動車(PEV)に使用可能な電解液です。そのためには充電に多くの時間を必要としない、いわゆる急速充電に耐える電解液を作ることが必要です。目下、種々新規電解質や溶媒の合成にチャレンジしています。
 将来的にはロボット用といった夢もありますが、私達の研究は明日すぐ役に立つ研究です。やりがいと同時に社会に対する責任を強く感じながら、毎日楽しく研究しています。


他の分子を認識する不思議な物質が
生命の謎を解き明かすかもしれません

生体分子機能研究室 高橋圭子教授(薬学博士)
薬剤師の資格を持つ。日本薬学会、シクロデキストリン学会、その他化学関連学会に属し活躍中。シクロデキストリン学会第1回奨励賞受賞。

消臭剤やパウダーコロンで環状オリゴ糖という言葉を聞いたことはありませんか。化学名は、シクロデキストリン(CD)です。CDには、香りを長続きさせる作用のほか、保湿性の向上、タバコなどの臭いを消す脱臭等の機能を持たせることができ、化粧品分野、食品分野、衣料品分野など、さまざまな分野での応用が進められています。また、医薬品分野では、薬品の安定化や効き目の時間調節のために利用され、少ない薬量を有効に使うドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発にも役立っています。
CDは、底のないバケツのような風変わりな形をした分子です。CDには、バケツの穴にすっぽり入る大きさの分子を取り込む性質があり、その性質が上の例をはじめとした様々な分野で利用されているのです。穴の大きさにあった分子をメ見分けるモというCDの性質は、味覚や嗅覚、免疫反応といった生体反応における分子認識の仕組みと非常に似通っており、その研究は生命の謎にせまる研究でもあります。役に立つ研究と夢のある研究に、わくわくする毎日です。


液晶による近未来型ディスプレイや人工筋肉を
研究、生体機能の解明にもつながる

物性化学研究室 平岡一幸助教授
日本物理学会、応用物理学会、米国物理学会にも所属する理論派。

液晶ディスプレイが急速に普及し、現在ではライフスタイルそのものに影響を与えています。液晶ディスプレイを動作させている化合物(つまり液晶)は細長い分子からできていて、その分子を整然と並べることでディスプレイとしての機能を発現させています。
我々の研究室では高速応答性能を持つ近未来型液晶ディスプレイを実現する新しい液晶材料の研究を行うとともに、「液晶とプラスチック」・「液晶とエラストマー(エラストマーとはゴムのことです)」などを組み合わせることで新しい機能を持った液晶性の化合物を創り出すことを目指しています。例えば、液晶エラストマーは化学−力学変換素子、つまり化学モーターとなることから、アクチュエーターや人工筋肉さらには分子モーターへの応用が期待されており、現在、鋭意研究中です。最近では、生体内には数多くの液晶相が存在し、生命現象を担っていることが分かってきました。液晶と生命体を俯瞰することで、生命体の持つ神秘的なまでに高度化された機能を解明し、それを人類に役立てることを夢見て日夜研究しています。


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